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零売

零売訴訟 国の「強い圧力」示す音声データ提出

2025/11/04
佐藤 礼菜=日経ドラッグインフォメーション

処方箋医薬品以外の医療用医薬品を販売する、いわゆる零売(れいばい)の規制が薬剤師の権利を侵害しているなどとして、薬剤師3人が国に対して2025年1月に提起した訴訟
(関連記事:零売規制は違憲か、薬剤師が国を提訴)で、第3回口頭弁論が25年10月31日に行われた。
原告側は「国が全国の零売薬局に極めて強い圧力をかけた」と主張し、行政指導の内容を記録した証拠を新たに提出した。

厚生労働省はこれまで、通知によって零売を制限してきたが、原告側は法的根拠のない通知によって薬剤師の職能が制限されている現状を問題視。
裁判で、これまで国から出された通知には法的根拠がないことの確認などを求めている。

一方、国側は、医療用医薬品は、医師や歯科医師の処方箋もしくは指示により使用されることを前提に承認されたものだと反論。
さらに、零売を専門に行う「零売薬局」などにおいて、零売が常態化しているのであれば、実質的に「医業」に該当する可能性があり、「医師でなければ、医業をなしてはならない」とする医師法17条に抵触すると指摘。
また、患者の状態から販売の可否や用法・用量を判断することは、「薬剤師の職能の範囲外」と主張している。

さらに、零売に関する通知は地方公共団体に対する「技術的助言」に過ぎず、外部的な法的拘束力を持たない行政規則であるとして、「原告らに対して何らの効果も及ぼすものではない」とした。

これに対して原告側は、「(零売に関する)通知はいずれも外部的効果を有する」とし、「その執拗な行政指導の根拠となっている」と反論。
4薬局に対する行政指導の記録などを証拠として提出した。

扇柳氏「零売は社会の隙間を埋める存在」
閉廷後に行われた記者会見には、原告の長澤薬品(東京・豊島)の長澤育弘氏、まゆみ薬局(福岡市)の山下吉彦氏が出席。
GrandHealth(東京・港)の箱石智史氏は欠席したが、その理由を長澤氏は「国の対応により従業員が不安を感じ、2人が退職したため、その対応に追われている」と説明。
「(通知が)零売薬局の経営や雇用にいかに深刻な打撃を与えているか、という何よりの証拠だ」と述べた。

今回新たに、都内で零売薬局を展開するオオギ薬局(東京・千代田)グループの代表、扇柳創輔氏と恵比寿店代表の村上正樹氏も会見に登場した。
両氏は2021年に厚労省から呼び出しを受けており、その際の音声データの書き起こしを証拠として提出した。
原告側は、やりとりの内容について、「通知を遵守しない限り、処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売を規制するかのような警告」が行われたと指摘している。

両氏はその後も度重なる指導を受けた。
扇柳氏は「通知を守らなければどうなるのか尋ねたところ、担当者が机をたたいて『通知を守ることが前提だ』と言われたこともある」と当時を振り返った。
村上氏も「厚労省から強くプレッシャーを与えられて、店を持ったばかりで借金も抱えていたため萎縮してしまった」と述懐。
「国は“通知は行政内部のもの”と主張するが、それは道理に合わない」と訴えた。

扇柳氏は「零売は、医療制度の狭間で困っている人や、供給問題に直面している人を支える重要な仕組みだと確信している」とも強調した。

原告側は、零売の原則禁止を盛り込んだ改正医薬品医療機器等法(薬機法)の施行を見据え、早期の結審を求める構え。
国側によると、改正薬機法のうち零売に関する条項は2027年5月までに施行される見通しだ。

第4回口頭弁論は2025年12月23日に行われる。

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