81歳現役医師の健康習慣「朝晩の入浴と白湯で血行促進、食事は3食欠かさずに。激烈な更年期障害を乗り越えて」
健康のプロとも言える医師たちは、自分自身の体にどのような対策や手当てをしているのでしょうか。元気に活躍を続ける女性医師3人が、日ごろ行っている健康習慣を紹介します(構成:山田真理)
水分補給は白湯から
現在は、埼玉県にある病院の女性外来で、月1回の初診と週2回の再診を担当し、患者さんの診療にあたっています。
私が今も元気に活動できているのは、食、運動、睡眠に気をつけて規則正しい生活を送っているからではないでしょうか。
子どもの頃から朝は4~5時に起きて、夜は20~21時にベッドに入る習慣。
最近は3時間もすれば尿意で目が覚めてしまいますが、これは加齢による夜間頻尿なので仕方のないこと。
そこからうまく寝つけなければ、いっそ起きて本を読んだり温かい飲み物を摂ったりして、眠気が訪れたらまた横になります。
高齢期の睡眠時間は神経質にならなくてOK。眠れる時に寝る、で十分です。
そして朝起きたら、少し熱めの41~42度のお風呂に15分浸かって体をしっかり温めます。
こうすることで体温が1~2度上がって、血行がよくなる。こわばった体がほぐれ、関節の動きもスムーズになるため、1日のスタートに欠かせない習慣です。
免疫が活発に働き、心身を健やかに保つために必要な体温は36.5度以上とされています。
逆に言えば、冷えを放置していると、肩こりや関節痛、疲労感、めまい、頻尿、便秘、自律神経の乱れといった不調に加え、さまざまな病気を引き起こす恐れがあるということ。
熱を産生する筋肉の量や食事量が男性に比べて少ない女性、特に中高年こそ温活が必須だと考えています。
そもそも私が女性外来を専門にするようになったのは、48歳から59歳まで激烈な更年期障害に悩まされたからでした。
特にひどかったのが全身の冷え
勤務先の病院で取り入れていた低温の乾式サウナで全身を温める療法を受けて効果を感じていたのですが、猫を飼い始めて時間が取れなくなり、お風呂での温活に切り替えました。
ただ、乾式サウナと同じ効果を得るには1日2回の入浴が必要。ですから、夜も40~41度のぬるめの湯に15分浸かって体を温めます。
副交感神経が優位になり、眠りに入りやすくなるんです。
そして朝も晩も、お風呂から出たら必ずコップ1杯の白湯を飲みます。これも冷え対策のひとつ。
白湯は内臓を温めて血流を促してくれるため、常に持ち歩いて、喉が渇く前にこまめに飲むようにしています。
食事は3食欠かしません。なかでも、1日の活動を支える朝食に重きを置いています。食生活を見直したのは、75歳の時に受けた健康診断で、血圧が少し高く、軽い糖尿病であることがわかったのがきっかけでした。
抵抗力も落ちていたのか、虫垂炎にも続けて3回なってしまって。
野菜スープで血圧改善
そこで体質を改善しようと始めたのが、抗酸化作用が期待できる野菜たっぷりのスープです。
野菜は、玉ねぎ、にんじん、キャベツ、かぼちゃを基本に、ブロッコリーやだいこん、ごぼう、キノコなど、その時に食べたいものを加えます。
それぞれを約100gずつ刻み、約1Lの水を加えて火にかけ、沸騰したら弱火で30分ほどコトコト煮込むだけ。
私はその日のうちに食べ切ってしまいますが、2~3日は冷蔵庫で保存可能です。
ポイントは、塩などの味つけを一切しないこと。最初は物足りなく感じたものの、だんだん野菜本来の味や旨味が美味しいと思えるようになりました。
そうして薄味に慣れてくると、食事で摂る塩分量も自然と減り、なんと血圧が正常値に!簡単に作れるうえ効果もあるので、ずっと続けています。
もうひとつ食事で注意しているのが、卵、豆腐(豆類)、肉、魚など体の組織を作るタンパク質を含む食材を意識して摂ること。
私は魚が好きなので、朝食に2人前を食べることもあります。
実は75歳を過ぎた頃、体重が3ヵ月ほどで6キロも減ったことがありました。
原因は筋肉量と骨密度の低下。女性の筋肉量と骨密度は50歳くらいまでは横ばいですが、何も対策をしなければ減る一方なのです。
私の目標は、100歳まで現役の医師を続けること。
ですから、食事だけなく運動も大切だと考え、週2回、パーソナルトレーナーについてトレーニングを受けることにしました。今年で7年目です。
筋肉が減ってくると、高齢者は体の弱点だった部分にゆがみや痛みが生じてくる傾向があります。
私は、大学時代にスキーで骨折した左足を右足でかばうような歩き方をしていました。
トレーナーはそうした私のくせを見極め、上手に全身をほぐしてからトレーニングを開始してくれるので安心です。
また、関節を柔軟にするトレーニングでは血行が促進され、気分もリフレッシュ。筋肉も少しずつついてきました。
自宅でも、トレーナーに教わった、床に座って足指の間に手指を入れ、足先や足首をゆっくり回して柔軟性を高めるセルフケアを行っています。
そうして食事や運動に気をつけていたにもかかわらず、80歳になった時、急に血圧が上がってしまったことがありました。
その時飲んでいた漢方薬に含まれる生薬の成分が原因かもしれないと思い、服用を止めると2ヵ月ほどで血圧は正常に。
これまで何の問題もなく使ってきたものでしたが、年齢とともに肝臓の代謝機能が落ち、薬が効きすぎて血圧上昇という副作用が強く出てしまったのです。
変化していく体の状態には、よりいっそう敏感でありたいと思った出来事でした。
今や女性の2人に1人は90歳を超える時代です。どうせ長く生きるなら、毎日を楽しく快適に過ごしたい。
そのためには、ストレスの原因から上手に身をかわす、無理だと思うことは深追いしない、くだらないことに関わるのは時間のムダと割り切ることも大切だと思っています。
あれこれ不調を感じるのはつらいものですが、それは体からの大切なサイン。
しっかりと受け止めて、そのつど適切に対処していきたいと思っています。